アーノルド・トインビー

タイやマレーシアでは、外国人のロングステイ受け入れには熱心だが、土地所有は原則的に認めていない。

その根底には「植民地化」への恐れがあることを忘れてはならない。

われわれは彼らにとって、「お客さん」であるけれども「侵略者」でもあるのだ。

アーノルド・トインビーは、一八、一九世紀にイタリアで暮らしたイギリス人たちについて、彼らはイタリアの過去の美術は讃美したが、イタリア人と交わろうとはせず、喋国人同士だけで交際し、まとまって暮らすコロニーを形成していたと指摘している。

多くの英国人の熟年やシニア層が暮らしながら、イタリア人が英国に対して親近感を持つことは、ついになかった、という。

第一次世界大戦後は、強いドルを背景にして、パリに多くのアメリカ人がやってきたが、彼らもまた景気よく金を使う一方、フランス人との交流は少なかった。

また第二次大戦後は、敗戦国であるイタリアに、多くのアメリカ人がやってきた。

老後のリタイアとは違うが、「太陽がいっぱい」(アラン・ドロン主演の映画で有名だが、原作はバトリシア・ハイスミスの『リプリー』)の青年たちも、アメリカからやってきて、自分たちの仲間とだけつき合っていた。

金に困らないのをいいことにして、無為に過ごす彼らに向けて、現地のイタリア人が「罰当たり者め」と眩くシーンが、私には忘れられない。

シニア層の老後の東南アジアへの移住の注意点

バブル崩壊後、ジャパンマネーの威力は衰えたものの、東南アジア諸国では今も日本人が落とす金への注目度は高い。

フィリピンやインドネシア、台湾でも、日本人のシルバー・ロングステイを受け入れる体制が整いつつあるし、中国でも、これをビジネス・チャンスと捉える向きがあるようだ。

ただし、東南アジアへのロングステイの場合にも、英語圏(白人優位国家)での差別とは別の、対日感情を念頭に置いた行動が求められる。

近年の中国における反日デモや暴動は、日本の過去の戦争責任に向けられているだけでなく、昨今の日本人の生活態度それ自体に対しても向けられていると思った方がいい。

アジア諸国にロングステイする場合、そこで日本人は、多くの金を落とす。

それは現地の人々を潤すが、同時に、日本人のマナーが悪ければ、反日感情を煽ることになり、治安の悪化や滞在費用の上昇となって跳ね返ってくる。

そして何より、現地の人々を侮辱し、その尊厳を傷つけることになる。

学園紛争に参加したかどうかは別にして、アメリカ帝国主義の搾取に憤り、金だけがすべてではないと思ったことが一度でもあるシニア層の人なら、「一〇〇〇円でゴルフが出来る」とか「うちにはメイドが二人いる」なんてことを、自慢するようにはならないで欲しいと思う。

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